水のなかでもがいて息をした

両手で顔を覆った。もう無理だ。喉の奥は震えるし目は熱くなって視界が滲むし、声なんてまともに出せやしなかった。なんだって、いつからこんなに情けなくなってしまったんだろうか。

「好き、や・・・なぁ、俺、どないしたらええ」

仰向けなせいでこめかみを流れていくのが鬱陶しいのに拭うことさえ出来なかった。みっともない言葉ははたして届いただろうか。どんな顔をしているだろう。見せられない代わりに見ることもできなくて奥歯を噛む。いつだって待っていてくれたのに、ずっと応えなかったのは自分の方だ。曖昧なままで、それでいいと思っていたのにどうしてこんなことになってしまったんだろう。諦めが悪くて、でもいつかはどうでもよくなるんじゃないかって、そうなるのを待って、ただ拒否するのが怖かっただけだ。友達という枠組みすらなくなってしまうんじゃないかと怯えて何も言えなかった。

「お前、俺のこと、嫌いになったんじゃなかったんだ・・・」
「え?」
「だって、最近、目も合わせてくれなかったし」

指の隙間から見た顔は苦笑いのような照れ笑いのような、よく分からない表情をしていた。臆病になって避けていたのは事実で、どうしたらいいのか分からなくて、嫌われたくなくて、恥ずかしくて、向かい合ったって何も言えなくなってしまって逃げていた。あの頃から何も変わってない、結局は逃げるしかなかった。かっこ悪いって、自分でも分かっていたんだ。
こんなこと今まで無かった。女の子は分かりやすかったしどんな時でも余裕を持てた。それなのに、こんなに切羽詰るなんて、男相手に。しかも奥村くん。ため息を吐くことさえままならない。

「もう、どないしたらええのかわからへんもん」

気持ちの整理も出来やしない。何を考えたってぐるぐると頭の中できっとごちゃごちゃになる。押さえつけるのが苦しくて、何か言わないとって口を開くのに何も出てこなくて辟易した。喉が痛くなる。こんなはずじゃなかった。もっと上手くやるはずだった。でも、出来なかった。いつまでも取り繕ってなんていられなかったんだ。だって俺が耐えられない。

「こないに厄介なもんとは思わんかった」
「志摩、」
「・・・何?」
「ちょっと腕どけろ」

言われるのと同時に手首を掴まれて押しのけられた両腕は呆気なく顔から退いた。遮断していた照明の光に目が眩んで、またじわりと潤む。横隔膜がせわしなく上下して息が苦しくなる。ひどいなぁ、せっかく、あとちょっと、耐えていたかったのに。

「奥村くん、」
「お前な、色々考えすぎなんだよ」
「ん?」
「馬鹿なんだし」
「それ、奥村くんにだけは言われたないわ」

一瞬きょとんとした後にあははと笑ったから、それは確かに考えすぎだったんじゃないかって思えてきてしまう。あんなに悩んだのに。あんなに不安だったのに。

「一人でなんとかなるわけないだろ」

君のせいだよ、分かってるの。こんなに頭使って、真剣に人のこと考えて、全部全部君のことだよ。そんな風に笑ってないでよ、見えなくなるから。
ぼろぼろと零れ落ちる目の淵を不器用な親指が擦っていった。

少女漫画展開